重力点と現象・仮象重力点について(本文)

 

 

 

 

 

1 重心点と重力点について

 

 

 

「重心点」と「重力点」、一見同じように見えますが、互いに根本的に異なっています。

 

「重心点」とは、その物体の「質量の中心点」です。観念上また計算上、この物体に対する「引力」はこの物体の「重心点」すなわちその物体の「質量の中心点」に対して作用するものとされます。

 

 これに対して、「重力点」とはその物体の「重力慣性力」が「最大」となる点です。

 

 具体的にはその物体に、「鉛直抗力」が流入するその流入点です。

 

 これだけではわかりづらいので、別添の「図 重力相関図」をご覧ください。

 

 

 

 この図では「鉛直抗力」自体は省略していますが、「鉛直抗力」は、地面から「はかりC」へと流入し、「載せ台B」を経由して「物体A」へと到達します。

 

 すでに論述したように、物体Aへと到達した「鉛直抗力」は、さらに物体Aの内部へと浸透し、ここに「加速度伝搬の遅延」を生じ、その結果「重力慣性力」を生じます。

 

 しかしこの物体Aの内部において、「重力慣性力」の大きさは一定では「無く」、「濃淡」があります。

 

 すなわちこの物体Aに「鉛直抗力」が流入するその点、その点において「重力慣性力」は「最大」となります。通常この「最大重力慣性力」を単に「重力」と呼称しています。

 

 したがって、「物体A」における、「重力点」(最大重力慣性力点)は、「図 重力相関図」中の赤丸印となります。

 

 

 

 他方、物体A中における「最小重力慣性力点」は物体Aの「最上面表面」で、ここにおける「重力慣性力」は「0」となります。

 

 そしてこの「最小重力慣性力」と「最大重力慣性力」との間には無数の濃淡があり、物体Aの下部に行くほど重力慣性力が大きくなり、物体Aの上部に行くほど重力慣性力が小さくなります。「重力点」(最大重力慣性力点)については、以上のとおりです。

 

 

 

 ※ただし物体Aを「天井」等から「吊るした」場合は「逆」となり、物体Aを吊るしたその点、すなわち物体Aの「最上面表面」に「最大重力慣性力」(すなわち「重力」)が生じます。   

 

またこの場合、物体Aの最下面表面における「重力完成力」は「0」となります。

 

 結局物体Aにとって、「鉛直抗力」が流入する点において「最大重力慣性力」(すなわち「重力」)が生じ、ここから最も離れた点において、その重力慣性力は「0」となります。

 

 

 

 

 

 他方「重心点」は「質量の中心点」であって、物体Aが「球体」であるならば、その「重心点」は、球体の物体Aの「中心点」となります。

 

 ここで「引力」が物体Aに作用する場合、「引力」はこの物体Aの「中心点」にだけ作用するのではなくて、物体Aの「全体」に作用します。しかし「観念上」あるいは「計算上」、「引力」はこの物体Aの「重心点」(ここでは物体Aの「中心点」)にのみ作用するものと「みなす」ことができます。

 

 以上の様に、「重心点」と「重力点」とは、互いに関連はしていますが、根本的に異なった概念です。

 

 

 

2 重力点と現象重力点

 

 以上の考察をふまえて、次に「現象重力点」について、分析を進めます。

 

 ここで、物体AをはかりCの上に「直接」載せたとします。

 

 すると「鉛直抗力」は「はかりC」より「直接」物体Aへと流入します。

 

 するとこの時における「重力点」は、はかりCと物体Aとの「接点部分」である、となります。

 

 ここではかりCは、物体Aの「重力」を「直接」に計っています。ここで物体Aの「質量」を「1kg」であるものとすると、はかりCの表示も「1kg」となります。

 

 次に、この物体Aを今度は「図 重力相関図」にあるように、「載せ台B」に乗せて、物体Aの「重力」を計るものとします。

 

 ただしここでは「考察の便宜のため」、この「載せ台B」の質量は「0kg」であるものとします。そして物体Aの「質量」を「1kg」とします。

 

 すると、「図 重力相関図」のとおり、はかりCは「1kg」と表示します。

 

 このことは一見「当たり前」のことの様に「見えます」。

 

 しかし決して「当たり前」ではありません。

 

 物体Aにとって、「重力」が「発生」しているのは、「重力点」においてなのです。「図 重力相関図」においては、この赤丸印の地点が、その「重力点」です。ということは、この図において「重力点」は、図の黄色丸印の地点では「無い」ということとなります。

 

 にもかかわらず、あたかも黄色丸印の地点にこの「重力点」が「ある」かのように「現象」しているのです。

 

 この黄色丸印の地点に、あたかも「重力点」が「ある」かのように「現象」しています。

 

 これがゆえにこの黄色丸印の地点を「現象重力点」と呼ぶこととします。

 

 

 

3 鉛直抗力と重力慣性力  

 

 このように「重力点」が「現象重力点」へとあたかも「移動」しているかのように現象しています。

 

 したがってこの「移動」を「重力点の現象的移動」と呼ぶこととします。

 

 ここで、はかりC及び載せ台Bを通じて、「鉛直抗力」が物体Aへと流入してきます.

 

 この「鉛直抗力」とは、「物体的力」です。そしてこの場合(物体Aを載せ台Bに「載せた」場合)、この「物体的力」の本質は「圧縮」に対する「反発力」であり、この「反発力」の根源は「電子間」および「陽子間」における「電気的反発力」です。そしてこの「反発力」が生じるのは、地球と物体Aとの間に相互に「引力」が働き、その結果、物体Aと地球とが、またその地球と物体Aとによって挟まれる載せ台BやはかりCが、「圧縮」されるからです。

 

 このように、物体Aと地球との間によって生じた「電気的反発力」が物体Aへと到達し、物体Aの内部で「重力慣性力」へと転化し、その「重力慣性力」が「重力点」において「重力」(最大重力慣性力)として結晶します。

 

 ここで物体Aにおいて「重力慣性力」が生じるのは、物体Aが「質量」を有するからです。

 

 「質量」の本質は「慣性」です。そして質量が「慣性」であるがゆえに、「鉛直抗力」が物体Aに働き、物体Aに「加速度」を与える過程において、物体Aの内部において「加速度伝搬の遅延」を生じます。そして「加速度伝搬の遅延」が、物体Aの内部に「重力慣性力」を与えるのです。このようにして「重力慣性力」および「重力」(最大重力慣性力)は形成され、そしてその「重力」の結晶点が「重力点」なのです。

 

 

 

4 重力点の現象的移動 

 

 以上により「質量」が「重力慣性力」の要因でした。

 

 ここで「考察の便宜上」、「載せ台B」には「質量」が「無い」ことが前提されました。

 

 そしてこれまでの考察により、この「載せ台B」に「質量」が無い以上、この「載せ台B」には「重力慣性力」が生じ「無い」こととなります。

 

 その結果、この「載せ台B」に生じるのは、「圧縮」による電気的「反発力」のみであることとなります。そしてこの「電気的反発力」は、この「載せ台B」の内部の「電子」間・「陽子」間における「作用・反作用」によって均等化されます。ちなみに原子は電子・陽子・中性子から構成されています。そして1モル(炭素原子に換算すると12g)の微粒子(原子・分子)中には、約6×10の23乗もの粒子(原子・分子)が存在します。このようにこの「作用・反作用」の連鎖には膨大な数の原子・分子、そして電子・陽子が関わっています。

 

 この膨大な数の電子・陽子が「載せ台B」の内部で押し合いへし合いを繰り返す中で、その内部における「力」が「均等化」されて行きます。これは「コロイド粒子」が互いの電気的反発力によって押し合い、その結果コロイド溶液中の粒子の分布が均等化することと類似しています。この結果、この「載せ台B」の内部における「力」は、その「どの部分」をとっても全て「同じ」となります。その結果、この「載せ台」の「両端」においても、「同じ」力が働きます。ただし「作用・反作用」によりその両端に生じる力の「向き」は、それぞれ「逆向き」です。この結果、この「載せ台B」に生じる力は、この「載せ台B」の上端においては、物体Aを「支える力」として現象し、「載せ台B」の下端においては、「はかりC」を「押さえる力」として現象します。ここで「図 重力相関図」の想定によれば、物体Aの「重力点」に生じる「重力」は「1kg」(正確には「1kg重」)です。したがって、「載せ台B」の上端の「支える力」も「1kg」です。したがって「載せ台B」に生じる力もまた「1kg」です。結果、「載せ台B」内部における無数の「作用・反作用」を通じて、「重力点の現象的移動」を生じ、その結果、「現象重力点」において、そこに「重力点」そのものがあるかの様に「現象」します。

 

 

 

5 重力点の現象的上方移動と現象的下方移動

 

 ここで「重力点の現象的移動」には様々な形態があります。

 

 おもりなどを「吊るす」場合には、別添の【図 重力点の現象的上方移動】のように、「おもり」に生じた「重力点」は、吊るしている「ひも」等を通じて、「上方」へと現象的に移動し、図示した場所に「現象重力点」を形成します。

 

 またおもりなどを「載せる」場合には、別添の【図 重力点の現象的下方移動】のように、「おもり」に生じた重力点は、載せている「棒」等を通じて、「下方」へと現象的に移動し、図示した場所に「現象重力点」を形成します。 

 

 

 

6 重力点の変形移動

 

 また重力点の現象的移動は、【図 重力点の現象的変形下方移動】にあるように、「載せ台」が「変形」している場合にも生じます。この場合においても、「重力点」に生じた重力は、載せ台を通じて現象的に移動し、図示した場所に「現象重力点」を形成します。

 

 「現象重力点」という概念は、のちに「均衡現象」を分析する際に、その分析の根本的基礎の一つとなります。

 

 

 

7 順形現象重力点と変形現象重力点

 

 ここで、まっすぐな「棒」などの上に、おもり等を載せた場合を「順形」とします。

 

 他方、「くの字」型等に「変形」した載せ台に乗せた場合を「変形」とします。

 

 ここで【図 順形現象重力点と変形現象重力点】をご参照ください。

 

 そして「順形」の場合、重力点と順形現象重力点とが、同じ「鉛直線上」にある時は、この「おもり」は「転倒」せず「直立」の状態を保ちますが、重力点と順形現象重力点とが、同じ「鉛直線上」に無い場合は「転倒」します。※ただし「直立」といってもかなり「不安定」な状態なので、実際には何らかの「転倒防止補助装置」が必要です。

 

 これは、「変形」の場合も同様で、重力点と変形現象重力点とが、同じ「鉛直線上」にある時は、この「おもり」は「転倒」せず「直立」の状態を保ちますが、重力点と変形現象重力点とが、同じ「鉛直線上」に無い場合は「転倒」します。

 

 

 

8 仮象重力点について

 

 「均衡現象」の解明において、「重力点」、「現象重力点」とともに重要な概念が「仮象(かしょう)重力点」です。

 

 「現象重力点」の場合は、「順形」にしろ「変形」にしろ、重力を生じる物体の鉛直線上にその重力体を「支える」物体が、とにかく「存在」していました。

 

 最初の「図 重力相関図」を例にとれば、「物体A」を「支える」、「載せ台B」や「はかりC」が「存在」していました。

 

 しかしこの「仮象重力点」においては、物体Aを「支える」物体Bや物体Cが存在「しません」。

 

 ここが、「現象重力点」と「仮象重力点」とが大きく「異なる」点です。

 

 具体的には、「図 仮象重力点(斜方型)」や「図 仮象重力点(上皿型)」のとおりです。

 

 「図 仮象重力点(斜方型)」において、左方に1kgの重力体があり、右方にも1kgの重力体があります。ここで「さお」そのものに質量がなく、かつ支持点から左方の仮象重力点までの距離と支持点から右方の重力点までの距離が同じであれば、左方と右方の重力体同氏は互いに「つり合う」のです。

 

 すなわち「つり合い」の観点からみて、左方の重力体の「重力点」は、あたかも「仮象重力点」の「位置」に存在するかのように「見える」のです。しかしこの「仮象重力点」の「位置」には、これを「支える」物体が「無く」、あるのはただの「空間」のみです。

 

 したがって、ここではあたかも「空間」が、右方の重力体と「つり合う」ように「見える」のです。これは砂漠の「蜃気楼」にも似ています。あるいは「鏡」に映る「鏡像」にも似ています。それが故に、このここに「重力点」が存在するかのように「見える」地点・位置を「仮象重力点」と呼ぶのです。

 

 

 

 しかし「図」から分かるように、この「仮象重力点」は極めて「不安定」なものです。実際にこの「仮象重力点」と「重力点」を、あるいは「仮象重力点」と「仮象重力点」とを「つり合わせ」ようとすれば、実際には何らかの「安定装置」・「転倒防止装置」が必要となります。

 

 そしてそのような装置がなければ、「重力点」におけるわずかの「ゆらぎ」で、「仮象重力点」の「位置」も変化し、たちどころにこの「つり合い」が破れるところとなります。

 

 しかし逆に何らかの「安定装置」・「転倒防止装置」があれば、「仮象重力点」はあたかもそこに「重力点」が存在するかのように作用し、結果「つり合い」において重要な役割を果たします。

 

 なお「仮象重力点」は「鉛直抗力」と深く関わっています。

 

 したがってこの「仮象重力点」形成のメカニズムの解明については、次の「鉛直抗力」にかかる分析・考察を通じて行うこととします。